『リリカルなのは』シリーズの第二弾、このシリーズの中で最も好きな作品です。いや、全アニメの中でもかなりお勧めの部類に入ります。同じくらいお勧めできるほかの作品と比べてみると作画や演出面ではこの作品が劣る部分が多いかとおもいます。しかし、その分作品としての根幹の部分が優れているのではないでしょうか。
「なのはの前に現れる敵、本当は戦いたくないけど・・・」という基本的な物語の構造は前作と同じで、前作の良かった部分をより洗練したような印象。物語終盤の感動はより一層増しています。
前作はなかなかのスロースタートで、物語序盤は幼女向けアニメの雰囲気でした。しかし『A's』では一話目から高い熱量でスタートします。前作のフェイトにあたる戦わざるをえない敵「守護騎士」の一人であるヴィータが早速登場し、なのはに襲い掛かります。やはり前作ありきで無駄な導入部分を省けるのは2作目の強みです。
この「守護騎士」ヴィータですが、私はこの人の存在が『A's』を感動大作にした要因の一つだと思っています。余談ですが私の好きな女性アニメキャラクターランキング第一位はヴィータです。(ちなみに2位はBLACK LAGOONのバラライカ、3位はCLAYMOREの微笑のテレサです。)ヴィータ最大の魅力は「ギャップ」です。ギャップと言えば前作ではなのはが子供感と大人感のギャップを見せましたが、ヴィータはそれを上回っています。守護騎士は人間ではないので年齢設定は無いと思いますが、見た感じではなのは達よりも年下な雰囲気です。ゆえに普段は無邪気で少しわがままな子供、主である八神はやてには特になついていて、甘えるようなシーンも数々あります。しかしヴィータの本質は「守護騎士」、わけあって生命の危機にある主八神はやてを救うために戦います。敵を前にしたときのヴィータには、なのはのような容赦はなく乱暴な言葉を吐きながら敵を殲滅しにかかります。この乱暴な戦いが、無邪気であるがゆえに「八神はやてを守りたい」思いに歯止めがきかない様子、もう引くことができない守護騎士たちの現状を効果的に表現しています。さらにヴィータが使う武器の選択もすばらしいです。「グラーフアイゼン」ハンマー状の武器で、ヴィータの感情に連動するかのように大きさが変わります。粗暴さと無邪気さを合わせ持ったヴィータのキャラクター性、更には小さな体でハンマーを振り下ろす様はヴィータの必死さをより強調しています。「非情な運命に、涙を流しながらも全力で巨大なハンマーを振り下ろす」というシーンはヴィータのすべてを凝縮したような名シーンだと思います。
ストーリ面も前作を踏襲しつつ、「交錯する運命」みたいなものをより効果的に感じさせてくれます。特筆すべきは「善悪の完全な50:50」ということではないでしょうか。前作では最後の敵となるフェイトの母親が、娘を思う気持ちからとはいえ悪役の雰囲気を醸していました。しかし『A's』では悪役はおろか悪役風な人すら登場しません(一瞬登場する仮面の戦士は別として)。なのは達と何度も衝突する守護騎士達は自分たちを家族のように扱ってくれる主の命のために戦っています。普通この場合、「守護騎士たちには慕われている主も実は危険な思想を抱いていて・・・」というパターンが多いのですが、主八神はやては守護騎士たちが自分のために戦っていることすら知りません。どのキャラクターの側からでも違和感なく感情移入ができるこの構造が「誰も間違っていないのに戦いが繰り返される」というやるせない状況を観ている側にもひしひしと伝えてくるのです。
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