いきなり余談になってしまうが、この記事では文末は「だ、である」体に統一してみようと思う。
今までは基本「です、ます」に統一していたわけだが、話が長くなって、内容も理屈っぽくなっていくほど、この「です、ます」が邪魔になっていることに気付き、もどかしい思いをしていたわけだ。だた難しいのは、自分自身のことを話すような部分に関しては「です、ます」のほうが相変わらず丁度よく、実際、ここまでの文を書いている段階で、「です、ます」に戻したくてうずうずしている。
まぁ、このブログのメインは近況報告ではないので、そこは割り切って「だ、である」で頑張ってみようと思う。
ここからが本題。
「世界観」といえば、世界観がイイ、だとか、世界観を構築する、だとか、フィクション作品を語るうえでは何かと登場する言葉だ。私も、度々この言葉を使ってきたのだが、その意味がハッキリしないまま何となく響きの良さで使ってしまっている、いわゆる「困ったときの世界観」状態になってしまっているのではないか、と少々不安になってきたので、ここで私の中での「世界観」ついて整理してみようと思う。
「世界観」とは「物語中の概念を意図的に制限することで作られる仮想世界(に受ける印象)」だと思っている。要するに「そんな考え方自体、この世界には存在しませんよ。」という存在を作っていくことで生まれる物語全体の印象、ということだ。逆の考え方をすれば「ゼロから存在する概念だけを作っていく」という言い方もできるのだが、灰羽連盟やソラノヲトなどの世界観が素晴らしかったアニメを思い出してみると、なんとなく「制限」という言い方のほうがしっくりくる。
世界観について考えるとき、私は平面の図を思い浮かべている。アニメ内で起きた、事象A、事象B、事象Cがあった場合(事象といっても、街並みとか、しゃべり方とか、その幅は広い)、「点A,B,Cを頂点とする三角形の面積」にあたる部分がその時点での世界観である、というイメージを持っている。
「Aがあって、Bもあるということは、少なくともAとBの間のすべてが存在する可能性があると考える」ということだ。理屈っぽく言っているが、誰もが無意識にそう感じているはずである。
実際にはA,B,C,どころではなく、作品中には無数の点が存在する。しかし、たいていその点は、いくつかでグループを作って近いところにかたまっている。「ギャル語、金髪、学校をサボっている・・・」これらの点は非常に近いところにあることが分かるだろう。このような点だけがいくつ集まっても世界観が広がるということはない。そのかわりに、狭い範囲の世界感をより鮮明にするという役割を担っている。図で言えば三角形から、点が多くなって滑らかな円に近づいていくイメージだ。
世界観を構築していくうえでは、近い点をたくさん打ってその解像度を上げていくことも重要だが、時には全くかけ離れたところに点を打って、世界観を大きく広げるという作業も必要になる。そして、その作業こそが「世界観がイイ」につながるものでもあり、世界観を崩壊させてしまうようなリスクも併せ持っているのである。
私がこのように考えるようになったキッカケでもある例を挙げようと思う。急に気持ち悪い話になるので覚悟してほしい。
『けいおん』や『ゆるゆり』、『ひだまりスケッチ』など、女の子しか登場しない系アニメ、そこで比較的よく登場するセリフ、そのセリフが出た瞬間に世界観がひっくり返る思いがして、私は悶絶してしまうのである。
いつもの4人で行動している最中、とある一人が「ごめん、今日は先に帰るね。」と足早に去っていく。
その後、残されたうちの誰かがぼそっとつぶやく
「もしかして、彼氏かな・・・」この瞬間、世界観が倍に膨れ上がる。お分かりいただけただろうか。実際彼氏がいるかどうか、ということが問題なのではない。フィクションなのだから。重要なのは男性キャラがほぼ登場してこなかったアニメにおいて、「彼氏」という概念を生み出した、ということだ。
図にするとこんな感じになる。それまで「彼氏」という存在に一切触れず、それ以外の「学校」や「友情」などの点を打ち続けることで構築されてきた「彼氏という概念が存在しない世界」。そこに打ち込まれた「彼氏だったりして」という一つの点。これによって「彼氏という概念が存在する世界」が一瞬にして誕生する。
ストーリー上は「彼氏じゃなかった」ということになるのだが、一度誕生した世界は消えることがない。「今はいないけど、5年後はいるかもしれない」「10年後はお母さんかもしれない」と、その世界では存在しうる未来も含めて「可能性」が圧倒的に広がるわけだ。
この例について「彼氏だったりして」という点を打ったことが、是か非かという結論を出すのは難しいことだ。そして何より、こんなことの是非にこだわっているようでは現実に生きる人間として虚しい。
しかし、点の効果が絶大であるということは図を見るだけでも一目で分かる。物語を作るうえでは無視できない存在だ。そのあたりについて製作側がどの程度意識しているのか、気になるところだ。
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