Fate/stay nightのスピンアウト(スピンオフ)作品。ちなみに私は、Fateシリーズで言うと、stay nightは半分くらい見て挫折、Zeroはすべて視聴し、あまりにも高い戦闘シーンの完成度に感動済みである。
という状況でこのアニメを見始めると、ひとまず強烈な違和感を覚える。「もしもイリヤスフィールが魔法少女だったら」というストーリーなわけだが、まずFate本筋の設定からすると魔術のようなものは既に存在している。そこに「魔法少女」という似て非なる設定を足しているのだが、このニアミス感はどうしたものだろうか。この時点で企画倒れな雰囲気が漂う。
さらに現代のアニメにおける「魔法少女」というベタすぎる存在について考えてみると、なぜFateのスピンオフに魔法少女なのか、という疑問が湧く。今、アニメ内でアニメが登場する場面で、その劇中アニメとして頻繁に登場するのが「魔法少女もの」だ。つまり、最もアニメらしいアニメとして魔法少女が認識されているということ。まどかマギカのストーリーなんかもその認識を逆手に取ったものだといえる。Fateというシリアスな世界観のアニメに、この魔法少女をぶつけるということの意味、スピンアウト作品というよりはセルフパロディ作品という方がふさわしいのかもしれない。
というようにややうがった見かたで視聴を開始したのだが、私の期待値は良い意味で裏切られた。相変わらず、なぜFateに魔法少女?という違和感は消えないが、そのことを気にしなければ、つまり、Fateであるということを忘れれば、このアニメは現代の王道魔法少女ものとしてなかなかの完成度を誇っている。「現代の魔法少女といえばこういうもの」という展開がしっかりと押さえられていて、それでいてチープなパクリらない程度の作画、演出の完成度の高さが保たれている。
まず、カード回収に励むことになる2人の魔法少女。まあ、なのはとフェイトと彷彿とさせる二人なのだが、この二人が良い。程よく嫌みのない可愛さで好感が持てるし、ロリっ娘であるということで、シリアスシーンの多少のきれいごとも全然許せてしまう。このあたりも魔法少女という設定の良さをしっかりと引き出している。
また、戦闘シーンのかっこよさについては、過去の名作たちにも勝るとも劣らないものだ。基本絵の描き方(処理の仕方?)はFate/Zeroと同じもので、戦闘シーンについても全く同じとまではいかないが、あの重厚な雰囲気は引き継いでいる。とくに、6話のイリヤが英霊になったときの戦闘のかっこよさは鳥肌ものだ。本当にFate/Zero以来の完成度だったと言ってもいい。
現代の魔法少女に欠かせないもの、それは“葛藤”だ。魔法少女ものに「実は大人向けアニメ」というイメージを定着させたのも、この心理描写あってのものだろう。
このアニメにもしっかりと葛藤が組み込まれている。とはいっても、これはあまり期待できるものではない。葛藤というのはストーリーに根差すものだが、このアニメのストーリーは非常にシンプルだ。そのため、「もう戦いたくない」→「でも、友達を一人で戦わせるわけにはいかない、私戦う!」と葛藤自体も、私が想定できた最もシンプルなものだった。なぜ美遊があそこまで必死にカードを集めようとするのか、などということが明らかになればもう少し複雑で感動的なストーリーになるかもしれないのだが、そのことについて語られることはなく「2期製作決定」に逃げられてしまった。
というように、やはりストーリーや葛藤に関してはややこじんまりとした印象であった。しかし、これに関しても王道魔法少女もので培われたチェックポイントは最低限おさえている感じで、決して悪かったというわけではない。
あえてベタな展開をもう一度やり直しているようなこのアニメだが、ところどころに過去の魔法少女もの(たぶんリリカルなのは)へのオマージュなんだろうなというシーンがある。
例えば、魔法弾みたいなものを撃つときに「シュート!」と言ったり、最終話の「全力全開」というセリフは明らかに「スターライトブレイカーー!!」を思い出す。それから、ストーリーに関しても、「何も知らないはずなのに、全て知っているかのように的確なアドバイスをする主人公の母」など、なんとなく見たことあるようなシーンが多い。
これらをパクリではなくオマージュであると感じさせることができているのということが、このアニメの完成度の高さを物語っているのであろう。
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