江の島を舞台に、釣りを通して主人公たちの成長と友情を描いた物語。非常に爽やかで、嫌いになる要素がほとんどありません。
はじめに上の絵を見たときに「あの夏」のシリーズなのかな?なんて思いましたが、この絵がたまたま似ているだけで実際の絵はけっこう独特の雰囲気です。しかしこの絵が個人的にはなかなかよかったと思っています。「写真を明暗ごとそのままトレースした風」な絵で、海や魚の表現に躍動感があります(『ポニョ』っぽいかも)。
この絵のタッチ自体に夏らしい雰囲気を感じるのは私だけでしょうか。そのため、舞台の江の島の魅了も十分に出ていて、つい行ってみたくなる感じです。
物語における「成長」にもさまざまなパターンがあります。「ゼロからプラス」だけが成長だけではありません。「マイナスからゼロ」でも立派な成長であり、実際私たちに身近な成長はこちらではないでしょうか。登場人物たちはそれぞれの問題を抱えていますが、仲間を見つけて釣りをしていくことで少しづつそれを乗り越えていきます。「なぜ釣り?」と思うかもしれませんが、これにも意外な効果があります。「釣り」に至るまでに様々な葛藤がありつつ、魚を釣り上げる。その瞬間の「ザッバーン」という感じが「成長の証」としてうまく結びつき、たとえ些細な成長でも思いがけず感動してしまいます。
終盤はなかなかの急展開で「人類侵略の危機」に陥ります。ここからは登場人物たちの「友情」が発揮されていくのですが、音楽込みのテンポの良さもあいまって飽きのこない気持ちのいい展開になっていきます。「初めは敵対していた人物も大きな敵の前では協力的に」という映画のジャイアン的な要素もベタではありますがやはりアツくなるものがあります。
強いて言えば、最後はあれでよかったのでしょうか。爽やかさを最後まで貫いたともいえるのですが、やはり別れのシーンはもう少し引っ張って欲しかった。「その後のダイジェスト」みたいな感じでお別れシーンが処理されています。感動する準備をしていたのに・・・。
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